平成27年度 入学者のみなさんに

第7章 内部環境の維持BIOLOGY

確認テスト計6枚

7-1 体温調節


気温の変化は皮膚の受容器から感覚神経を介して間脳の視床下部へと伝わる。

低温にさらされた時の反応には、熱放散の抑制と熱産生の促進の
2種類ある。

熱放散を抑制するために交感神経が刺激される。
これにより体表の血管は収縮し、血液を介して熱が外界に逃げるのを防いでいる。
また体毛の根元にある平滑筋の一種である立毛筋を収縮させる。すると体毛が立ち、体毛のある部分に熱を通しにくい厚い空気の層ができる。

熱産生を促進するために代謝を活発にする。代謝を活発にするホルモンはサイロキシン、アドレナリン、糖質コルチコイドなどである。
これらのホルモンの影響で体内、特に骨格筋や肝臓で多くの熱が作られる。
筋肉が収縮すると熱が発生するので寒いと骨格筋のふるえがおこる。
またアドレナリンの作用で心臓の筋肉も活発に動き、拍動が促進される。

高温にさらされた時は基本的には低温の場合と逆だが、これに加えて交感神経の刺激を受けて汗腺から汗の分泌が促進される。
汗は蒸発する時に体表面から熱を奪うので、体温を低下させる働きがある。

7-2 ホルモン


ヒトの分泌腺には外分泌腺と内分泌腺がある。
外分泌腺には汗腺や唾液腺があり、分泌物を体の表面や消化管に分泌する。
この際に分泌物は導管と呼ばれる管を通って分泌される。

これに対して内分泌腺は分泌物を直接、体液中に分泌する。すなわち導管はない。
直接、血流を介して運ばれることが多い。

内分泌腺が体液中に直接分泌する物質をホルモンという。
これにはいろいろな種類があり、自律神経系とともに生体のホメオスタシスに重要な働きを示す。


この恒常性の維持の中枢は間脳の視床下部にある。



視床下部からは各種の放出ホルモンが分泌され、脳下垂体からのホルモン放出を促進する。

成長ホルモンは脳下垂体前葉から放出され、
成長を促進したり血糖を上げる作用を持っている。

甲状腺刺激ホルモンは脳下垂体前葉から放出され、甲状腺でのサイロキシン(甲状腺ホルモン)の分泌を促進させる

副腎皮質刺激ホルモンは脳下垂体前葉から放出され、副腎皮質での糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの分泌を促進させる。

抗利尿(こうりにょう)ホルモン、別名バソプレシンは脳下垂体後葉から放出され、腎の集合管での水分の再吸収を促進させる。






(表:入学前に覚えるのは本文中に出てくるホルモンだけで十分です)

脳以外の内分泌器官からもホルモンが分泌されている。
甲状腺からの甲状腺ホルモン(サイロキシン)は代謝を促進する。
甲状腺の裏側には4個の副甲状腺があり、副甲状腺ホルモンを分泌している。骨からカルシウムを溶出させ、血中カルシウムを上げる働きをしている。 


膵臓は膵液を膵管から分泌する外分泌の働きと、ホルモンを分泌する内分泌の働き、両方を持っている。
膵臓のの中のランゲルハンス島という場所にはホルモンを分泌する2種類の細胞がある。A細胞とB細胞である。

A細胞グルカゴンを分泌する。これは血糖を上げる働きをしている。
B細胞インスリンを分泌する。これは血糖を下げる働きをしている。血糖を下げるホルモンはこのインスリンだけである。他のホルモンは血糖を上げる作用を持っている。

副腎の皮質からは糖質コルチコイド鉱質コルチコイド、性ホルモンが分泌される。
糖質コルチコイドに血糖を上げ、代謝を促進する作用がある。
鉱質コルチコイドには腎臓の尿細管でナトリウムの再吸収を促進する作用がある。
副腎の髄質からはアドレナリンが分泌される。これには心拍を促進し、血糖を上げる作用がある。

ホルモンは内分泌腺から分泌されると血流を介して全身に運ばれるが、特定の器官のみに作用する。
ホルモンが作用する器官を標的器官という。ここの細胞はホルモンと特異的に結合する受容体を持ち、ホルモンが結合することで作用する。
甲状腺から分泌されるサイロキシンは体内の標的臓器に作用して、代謝を促進するホルモンである。
サイロキシンには視床下部や脳下垂体(のうかすいたい)前葉(ぜんよう)に作用して甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制する作用がある。
そのため、サイロキシンの血中濃度が上昇すると視床下部から出る甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの量や脳下垂体前葉から出る甲状腺刺激ホルモンの量が減少してサイロキシン濃度は減少する。
逆にサイロキシンの血中濃度が下がると逆に作用して濃度は増加する。こうしてサイロキシンの血中濃度はほぼ一定に保たれる。
このように最終的に作られた物質や働きの効果が前の段階に戻って作用することをフィードバックという。
調節のもととなった変化と逆の反応が生じるフィードバックを負のフィードバックという。
サイロキシンの場合には血中濃度の上昇という変化がフィードバックによって血中濃度の低下という逆の反応を招いている。すなわち負のフィードバックがかかっているということがわかる。

7-3 体液の調節とホルモン


腎臓は尿をつくる臓器である。左右に一対ある。
ヒトは尿素などの老廃物を尿に溶かして体外に排泄する。
この尿素は肝臓でアンモニアから合成される。
アンモニアは蛋白質が細胞で分解された時にできる有害物質である。

















腎臓の内部には片方につきおよそ
100万のネフロン、別名腎単位がある。



ネフロンは腎小体と尿細管からなる。

その腎小体は毛細血管が球状にからみあった糸球体とそのまわりを取り囲むボーマン嚢からなる。


腎動脈から腎臓に流れ込んだ血液は糸球体に入るが、糸球体の毛細血管の壁が薄いので、血漿の一部はボーマン嚢に漏れる。
この漏れてきたろ液を原尿といい、この過程を糸球体ろ過という。
この時、血球や血漿中の大きな分子の蛋白質だけはろ過されない。他のほとんどはろ過される。
ろ過は血圧によってなされる。


原尿は成人で
1日に約170リットルも生成される。この中には水やグルコースなど、体に必要な成分があるので、これらは尿細管で再吸収される。

再吸収されたものは尿細管に並行して走る血管側に吸収されていく。
健康な人では水は
99%、グルコースは100%再吸収される。
尿素などの老廃物はあまり再吸収されないので、尿中の濃度は高くなる。


ヒトの体液の浸透圧調節では腎臓に作用する2つのホルモンが重要である。
バソプレシン(抗利尿御ホルモン:ADH)と鉱質コルチコイドである。

体液の浸透圧が上昇するというのは、簡単に言えば血が濃くなることである。
この変化が間脳の視床下部で感知されると、脳下垂体後葉からバソプレシンが分泌される。
これは腎臓に作用して集合管での水の再吸収を促す。このことで血液が薄められる。

また、副腎皮質から分泌される鉱質コルチコイドは腎の尿細管に作用してナトリウムの再吸収を促進し、同時に水分の再吸収を増やす。

7-4 消化酵素の働きと血糖調節


消化液の中には消化酵素が含まれており、食物を吸収できるかたちに変化させている。
消化酵素はタンパク質の一種で、化学反応に関わり、反応速度を促進しながらも自身は変化しないという触媒作用(しょくばいさよう)をもつ。

触媒のうち細胞で作られて働くものを特に酵素という。
酵素の特徴には働きに適した最適温度がある、タンパク質が変性するような高温には弱い。
また一つの酵素は一つの物質にしか作用しないという基質特異性を持っている。

酵素には細胞内で働くものもあれば、消化酵素のように細胞外に分泌されて働く酵素もある。

だ液や膵液に含まれるアミラーゼという消化酵素によってデンプンはマルトースに分解され、これはさらに腸液に含まれるマルターゼという酵素でグルコースに分解される。

ちなみにグルコースは単糖類で日本語ではブドウ糖、マルトースは二糖類で日本語では麦芽糖(ばくがとう)、スクロースは二糖類で日本語ではショ糖(砂糖)である。



炭水化物はアミラーゼやマルターゼによって最終的に単糖類である果糖やブドウ糖に分解される。

でんぷんも炭水化物の一種で、アミラーゼによってマルトース、別名麦芽糖に分解される。


タンパク質はペプシンやトリプシンなどによってアミノ酸まで分解される。タンパク質もアミノ酸も窒素を内部に含んでいる。


脂肪はリパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解される。




7-5 血糖の調節


血液中のグルコースを血糖という。
血糖は組織でエネルギー源として使われている。
血糖が多い状態が続くのが糖尿病である。



血糖値が高くなるとインスリンの作用でグルコースは肝臓や筋肉、その他の細胞に取り込まれて、そこで消費されたり、グリコーゲンとして蓄えられたりする。

吸収された余分なグルコースは肝に運ばれて、グリコーゲンという形にされて貯蔵される。
なお、グリコーゲンもグルコースが多数連なった分子である。

インスリンは細胞内へのグルコースの取り込みと、細胞内消費を促進する。

血糖値が低くなるとアドレナリンやグルカゴンなどの作用でグリコーゲンが分解されて、血液中にグルコースとして放出される。これで血糖値を正常に戻す。

副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドは、蛋白質からグルコースを作る反応を促進して血糖値を上げる。
副腎髄質から分泌されるアドレナリンは、グリコーゲンからグルコースを作る反応を促進して血糖値を上げる。

小腸から血液中にグルコースが吸収され、食後は血糖値が高くなる。これを間脳の視床下部が感知すると、インスリンの分泌を促してグルコースをグリコーゲンに変換しようとする。


糖尿病はインスリンの作用が低下することでおこる。空腹時の血糖値が高くなり、食後の血糖値の下がりが悪くなる。インスリンの分泌低下、インスリンの標的細胞におけるインスリン受容体の異常でおこるが、ほとんどは分泌低下が原因である。

 



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