平成27年度 入学者のみなさんに

第6章 血液と循環BIOLOGY

確認テスト計4枚

6-1 血液の循環


体液には血管の中の血液、リンパ管の中のリンパ液、血漿が毛細血管から浸み出して組織の細胞の周囲を取り囲んでいる間質液(組織液)がある。

ヒトの体は体液を含めた内部環境を一定の状態に保つ性質があり、これをホメオスタシス、日本語では恒常性(こうじょうせい)という。

血液は心臓のポンプ機能によって循環している。

右心房の上側には洞房結節(どうぼうけっせつ:または洞結節)という一定の周期で興奮するペースメーカーがある。

この働きでポンプが作用し、一定方向の血液の流れが生じる。心臓は体から取り出してもしばらくは一定のリズムで収縮を繰り返す自動性を示す。

(図:洞結節の位置を確認しましょう。その他の名称は覚える必要はありません))

心臓の拍動の中枢は延髄だが、交感神経と副交感神経の影響を受ける。




心臓から組織に血液を送る血管を動脈、組織から心臓に血液を送る血管を静脈という。
静脈には逆流を防ぐ弁がある。

右心室から肺動脈を経て肺に至り、肺静脈を通って左心房(さしんぼう)に帰ってくる循環を肺循環という。
この場合肺動脈には酸素の少ない静脈血が流れ、肺静脈には酸素の多い動脈血が流れる。

左心室から大動脈を経て全身の臓器、組織に至り、大静脈を通って右心房(うしんぼう)に帰ってくる循環を体循環という。








(図:青い血管は酸素の少ない静脈血が流れている血管、赤い血管は酸素の多い動脈血が流れている血管を示す)

これ以外のルートとして門脈(もんみゃく)系がある。
消化管に入った動脈血は腸の毛細血管になって栄養を吸収した後、消化管の静脈に戻り、そのまま門脈(もんみゃく)を通って肝臓に流れ込み、肝臓で吸収、解毒作用がなされた後に体循環に入る。
















(図:腸のほうから帰ってくる血液は門脈(本幹)を通って肝臓に入ることを確認しましょう)

6-2 血液と免疫


血液は体重の8%を占める。
血液では有形成分である赤血球、白血球、血小板などの血球が
45%を占め、液体成分である血漿(けっしょう)が55%を占める。


赤血球は酸素の運搬をする働きをし、大きさは8μmぐらいである。血液1μmの中に500万ぐらい存在する。

白血球は生体防御の働きをし、核を持つ。大きさは
赤血球の2倍ぐらいである。血液1μmの中に5000ぐらい存在する。


血小板は血液凝固の働きをし、大きさは
赤血球より小さい。血液1μmの中に30万ぐらい存在する。


血液は栄養分や老廃物、二酸化炭素など多くの物質を血漿に溶かして運搬する。

酸素は赤血球が持っているヘモグロビンという赤いタンパク質と結合して肺から組織へと運ばれる。

(図:リンパ球は白血球の中の1つです)


ヘモグロビンは鉄イオンを持っている。だから、貧血の人は鉄分の摂取を勧められます。


ヘモグロビンは酸素と結合していない時は暗赤色だが、酸素ヘモグロビンになると鮮紅色になる。
暗赤色のヘモグロビンを多く含む血液を静脈血といい、鮮紅色のヘモグロビンを多く含む血液を動脈血という。
静脈血は大静脈や肺動脈を流れ、動脈血は大動脈や肺静脈を流れる。



体内に侵入した病原体は白血球の働きによって排除される。
白血球の中には病原体を白血球内に直接取り込んで分解し、排除するものがある。これを食作用という。

一方、白血球の中のリンパ球は免疫と呼ばれる生体防御のしくみによって異物を排除する。

免疫の最大の特徴は体内に侵入した病原体などの情報を記憶し、同じ病気にかかりにくくすることである。これを免疫記憶という。

一部のリンパ球は、病原体が体内に侵入すると、抗体という蛋白質を分泌する。

病原体のような体にとっての異物を抗原という。
抗体は特定の抗原と結合し、抗原抗体複合体を形成して病原体を排除する。これを抗原抗体反応という。

(図:ここでは抗体のYの字の形をイメージするだけでOKです)



同じ抗原が再び体内に入ってくると、一度目よりも素早く多量の抗体が作られ、病気の発病が抑えられる。このような抗体による免疫を液性免疫という。
一方、一部のリンパ球はウイルスなどの感染した細胞を直接排除する。このような抗体によらない免疫を細胞性免疫という。



ワクチン接種は免疫反応を利用して、自分で抗体を作り出す病気の予防法である。


血清療法は動物に抗原を注射して抗体を作らせ、その抗体を採取してヒトに注射する治療法である。
ヘビ毒に対する治療法が代表的である。





免疫は体にとって不利益に働くこともある。
花粉や食物中の成分など特定の抗原が体内に侵入すると、これに対して抗原抗体反応が過剰におこることで、かゆみやじんましん、喘息などの症状があらわれることがある。
このように抗原抗体反応が病的におこることをアレルギーという。




体に傷がつくと出血するが、しばらくすると止まる。
この場合、まずは傷口にまず血小板が集合して傷口を応急的に塞ぐとともに、血小板などから凝固因子が放出される。
これによって線維状の蛋白質であるフィブリンができ、血球をからめ取って血餅(けっぺい)と呼ばれる塊を作って完全に傷口をふさぐ。このような現象を血液凝固という。





6-3 酸素解離曲線


肺などの酸素が多く、二酸化炭素が少ないところでヘモグロビンは酸素と結合し、酸素が少なく二酸化炭素が多い組織でヘモグロビンは結合している酸素を離す。
ヘモグロビンが酸素と結び付く割合は酸素濃度の低い時には小さいが、酸素濃度が上昇すると急激に大きくなるS字型をしている。
ヘモグロビンと酸素の結合にはこのような特徴がある。



二酸化炭素濃度が高い場所でヘモグロビンは通常より多くの酸素を離す性質がある。だから血液中のヘモグロビンは二酸化炭素濃度の高い場所にやってくると、そこで多くの酸素を離し、ヘモグロビンの酸素は通常より減る。
このことグラフにあらわすとき、同じ酸素濃度、たとえば30mmHgのところをでは赤の点は黒の点よりも下になる。60mmHgのところでも赤の点は黒の点よりも下になる。
これを連続させると赤のグラフになる。
二酸化炭素の高い組織での酸素解離を描くと、通常の黒い線が右に移動したようにみえる。

このことを多くの教科書は 「二酸化炭素濃度が高いとこの曲線は右に移動する」と書いている。

要するにグラフを書いた時に「右に移動したように見える状態」というのは、その条件の場所で赤血球は通常より多くの酸素を供給しているということをあらわしている。
「二酸化炭素濃度が高いと右に移動する」、「温度が高いと右に移動する」、「酸性になったら右に移動する」という記載は次のように考えればいい。
二酸化炭素濃度の高い場所では酸素がたくさん供給される。
筋肉が動いて熱が発生している場所では、酸素がたくさん供給される。
酸素不足で乳酸などが増えて酸性になっている場所では酸素がたくさん供給される。


では実際に計算してみる。
肺胞が酸素濃度が100の所、通常の組織が酸素濃度が30ぐらいの所として考えてみる。
酸素解離曲線では、酸素濃度が100の所(肺胞)での酸素ヘモグロビンは通常95-98%を示している。これはグラフの黒線から読み取れる。

ヘモグロビンの98%が酸素に結合している肺胞の血液が、ある酸素濃度の低い組織に移動した時、黒の曲線上で酸素ヘモグロビンが60%であれば、割合として38/98のヘモグロビンが酸素を離すということを意味している。
仮にこの曲線が酸性のために右に動いたとすると、赤の曲線上で酸素濃度の低い組織での酸素ヘモグロビンは30%に下がるので、その組織では68/98のヘモグロビンが酸素を離すはずである。
つまり、組織が酸性になると、そこに到達したヘモグロビンはより多くの酸素を離し、酸性になった組織に酸素を供給してくれるのである。






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