平成27年度 入学者のみなさんに

第5章 感覚器と神経BIOLOGY

確認テスト計6枚

5-1 ヒトの眼


動物は外界からの刺激を受容器で受け取る。
受容器が受け取ることにできる種類の刺激を適刺激(てきしげき)という。

眼では角膜を通って入った光は水晶体で屈折し、網膜に上下が逆になった倒立像を結ぶ。

網膜には錐体細胞(すいたいさいぼう)と桿体細胞(かんたいさいぼう)という
2種類の光を受け取る視細胞がある。

錐体細胞は網膜の中心部の黄斑(おうはん)部に多く分布し、桿体細胞は黄斑の周辺部に多く分布している。

錐体細胞は色を区別できるが、弱い光に反応できない。明暗を区別する感度が低いので明るい場所で働く。


逆に桿体細胞は色の区別はできないが、弱い光に反応できる。

視細胞が受け取った光の情報は視神経細胞に伝わる。
この視神経細胞は盲斑(もうはん:図では盲点)と呼ばれる部分に集まって、そこで束になって網膜を貫き、眼球の外に出る。そのため盲斑の部分には視細胞がなく、光が受容されない。


厚いレンズは近くにピントが合い、薄いレンズは遠くにピントが合う。
眼でレンズの役割をはたしているのは水晶体である。もともとは球に近い形だが、周囲から引っ張ることによりレンズ型になっている。

引っ張る度合いを調節しているのが毛様体(もうようたい)である。これは筋肉を含むドーナツ型構造で水晶体を取り囲むように分布している。
近くにピントを合わせる時は毛様体の筋肉が収縮して輪が小さくなり、レンズとの間のチン小帯が緩んで水晶体は厚くなる。(毛様体筋が緊張するというのはドーナツ型の筋肉が虹彩方向に収縮するということで、結果的にレンズとの間の線維が緩んでレンズは厚くなる)


暗い所に入ると網膜の感度が上昇して、弱い光にも反応できるようになる。これを暗順応(あんじゅんのう)という。逆の現象は明順応(めいじゅんのう)である。

眼には網膜の感度を変化させるだけでなく、虹彩(こうさい)の中央の穴である瞳孔(どうこう:図では「ひとみ」と書いてありますが、瞳孔で覚えてください)の大きさを調節することで網膜に届く光の量を調節するしくみがある。
虹彩には
2種類の筋肉があり、それぞれ環状と放射状に分布している。
環状の筋肉は明所で収縮して瞳孔を縮小させ、放射状の筋肉は暗所で収縮して瞳孔を拡大させる。

5-2 ヒトの耳


ヒトは音という空気の振動を耳で受け取る。
耳は外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)の3つの部分からなる。

中耳は耳管でのどにつながっている。この管から外気が中耳に入ることで中耳の気圧が調節される。


音は外耳道(がいじどう)を通って鼓膜に届き、これを振動させる。

この振動は中耳の耳小骨(じしょうこつ)を介して内耳のうずまき管(蝸牛)に伝わり、その中のリンパ液を振動させる。





するとコルチ器にある聴細胞(ちょうさいぼう)の感覚毛が曲げられて聴細胞が興奮し、この興奮が聴神経を介して大脳に伝わる。
音の周波数の違いにより、よく振動する場所が異なるので、音の違いを感じることができる。



内耳には前庭と半規管もある。半規管は体の回転を受容し、前庭は体の傾きを受容する。




5-3 神経伝達


神経を作っている神経細胞はニューロンとも呼ばれる。
この細胞は細胞体、樹状突起(じゅじょうとっき)、軸索(じくさく)からなる。

樹状突起は他の細胞から情報を入力するためのもので短い。
細胞体には核がある。
軸索は他の細胞に情報を伝達するもので長い。












軸索が髄鞘(ずいしょう)に囲まれているニューロンを有髄神経線維(せんい:医学では繊維でなく線維の字を使う)と呼ぶ。






有髄神経線維は脊椎動物にしかみられない。
軸索には神経鞘細胞、別名シュワン細胞が何重にもまきついて髄鞘を形成している。


有髄神経線維の中で髄鞘がない部分をランビエ絞輪(らんびえこうりん)という。








神経細胞も普通の細胞と同じように細胞膜にあるナトリウムポンプを使って、ナトリウムイオンを細胞の外に汲み出して、カリウムイオンを細胞の中に取り入れている。
この能動輸送によってイオンの分布が不均一になり、膜の内側と外側の間に電気的な差が生じる。これを膜電位といい、静止時の膜電位を静止電位という。
静止時つまり普通の状態では細胞膜の外側がプラスで、膜の内側がマイナスである。


ニューロンが刺激を受けると刺激部位で膜電位が逆転して細胞の外側と比べて内側がプラスの状態になるが、この状態はすぐに戻る。

この時の膜電位の急激な変化を活動電位といい、活動電位が発生することを興奮するという。


通常の静止電位はー
60mVぐらいで、これが+40mVまではねあがる。この時の活動電位を計算すると100mVとなる。その持続時間は約1ミリ秒、つまり1/1000秒である。








(グラフ:膜電位はいつもは0より下で-60mVぐらいだが、興奮が伝わると細胞内の電位は100mV上昇して、プラス40mVまで跳ね上がり、次の瞬間に興奮が冷めてまたもとの-60mVに戻る)

一本一本のニューロンはある一定の大きさ以上の刺激を与えると興奮する。
この大きさを閾値(いきち)という。

ここで注意すべきは刺激の強さにかかわらず、生じる活動電位の大きさは同じであるということ。
これを全か無かの法則という。

ある一本のニューロンを考えると、刺激の強さは活動電位のの大きさではなく、発生頻度に変換されていることがわかる。
ただ、神経は閾値の異なる多くのニューロンからできているので、刺激を強くすると興奮するニューロンの数が増えて、活動電位の発生する頻度が高くなる。神経全体としては全か無かの法則は成り立たない。


ニューロンの軸索の一部で興奮が生じると、静止状態にある隣接部との間にプラスからマイナスに向かって弱い電流が流れる。これを活動電流という。

電流が流れた隣接部でまた、次に興奮が生じる。これが繰り返されることで軸索では興奮が両方向に伝導する。

有髄神経線維では髄鞘が電気を通さない絶縁体として働くので、興奮はランビエ絞輪(らんびえこうりん)部分がとびとびに次々と興奮して伝導する。
これを跳躍伝導(ちょうやくでんどう)といい、速く伝わる。それゆえ有髄神経線維は無髄神経線維よりも伝導が速い。

ニューロンの軸索の末端は他のニューロンや筋肉細胞などと狭い隙間を隔てて接続している。この隙間をシナプスという。
興奮が軸索の末端まで伝わると軸索の末端にあるシナプス小胞(しなぷすしょうほう)という袋からアセチルコリンという神経伝達物質が放出される。


これが接続するニューロンの受容体や筋肉の細胞膜に結合することで興奮がシナプスの軸索側から次のシナプスの樹状突起側に伝達される。
だからシナプスでの伝導方向は一方向である。



5-4 ヒトの神経系


ヒトの神経系は大きく中枢神経系と末梢神経系に分類できる。
中枢神経は脳と脊髄からなり、末梢神経は体性神経系と自律神経系からなる。

体性神経系には感覚神経と運動神経がある。

自律神経には交感神経と副交感神経がある。

中枢神経系は受容体で受け取った刺激を感覚神経を介して受け取り、これを統合して判断を加え、運動神経や自律神経を介して受容器に興奮を伝え、適切な反応を生じさせる。





大脳は精神運動の中枢である。
おおまかに言うと視覚中枢は後頭葉にあり。聴覚中枢は側頭葉にある。随意運動の中枢は前頭葉の一番後にあり、皮膚感覚の中枢は頭頂葉の一番前にある。


間脳(かんのう)は恒常性を維持する中枢である。具体的には体温、血糖、水分、食欲などを調節する自律神経の中枢である。
なお、体内の恒常性はすばやい反応を引き起こす自律神経系と、比較的ゆっくりした反応をひきおこす内分泌系によって維持されている。
この両方の中枢が間脳の視床下部である。


中脳(ちゅうのう)は眼球運動、瞳孔反射の中枢である。
ただし、唾液分泌、咳、飲み込みの反射中枢は延髄で、手足や排尿排便の反射中枢は脊髄である。


小脳は平衡バランスを調節する中枢である。

延髄(えんずい)は呼吸運動、心臓の拍動を調節する中枢である。唾液分泌、咳、飲み込みの反射中枢でもある。口に物を入れると唾液が出てくるのは延髄反射の一種である。

脊髄は脳と体の各部を結ぶ中枢で、脊髄反射の中枢でもある。





無意識に素早くおこる単純な反応を反射といい、これが起こる時に興奮が伝わる経路を反射弓(はんしゃきゅう)という。
熱い物をさわった時に手を引っ込める反応は中枢が脊髄にある脊髄反射の一種で、屈筋反射(くっきんはんしゃ)と呼ばれる。

膝の少し下の部分を叩くと足が跳ね上がる。これも脊髄反射の一つで膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)という。




自律神経には「闘争の神経」と呼ばれる交感神経と「安静の神経」と呼ばれる副交感神経があり、これらは互いに逆の働きをする。

また、神経伝達物質として交感神経はノルアドレナリンを、副交感神経はアセチルコリンを分泌する。

ちなみに運動神経は自律神経ではないがアセチルコリンを分泌する。


交感神経は戦う時に興奮する神経なので、興奮すると瞳孔は拡大し、心拍は促進し、気管支を拡張させ、消化管には抑制作用を示し、立毛筋を収縮させて毛を立たせ、発汗を促進する。
体表の血管を収縮させる。

副交感神経では瞳孔は縮小し、心拍は抑制し、気管支を収縮させ、消化管には促進作用を示す。

副交感神経は顔面以外の体表には分布していないので立毛や顔面以外の発汗にはあまり影響しない。
体表の血管は交感神経が興奮していない時には拡張した状態にあり、副交感神経の刺激で拡張するわけではない。




動物の多くは筋肉を効果器として使って体を動かす。
骨格筋の筋細胞は別名、筋線維とも呼ばれる。
これは円柱形の多核の細胞で、骨格筋の筋細胞の細胞質には筋原線維という実際に収縮を行う蛋白質でできた線維がある。

筋原線維はアクチンやミオシンと呼ばれる収縮タンパク質を主成分としている。
筋原線維は運動神経から神経伝達物質であるアセチルコリンを受け取ると収縮する。


運動神経の神経伝達物質は運動神経の軸索の末端にあるシナプス小胞から放出される。



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