平成27年度 入学者のみなさんに
全ての生物の体は細胞でできている。
細胞は核と細胞質からなる。
全ての細胞質の外層には細胞膜がある。
細胞膜は細胞質の外側を包んでいる薄い膜である。
細胞膜は半透膜(はんとうまく)に近い。
半透膜とは水は通過させるが、大きな物質は通過させない性質を持つ膜のことである。
染色体を核内に持つ生物を真核生物という。
一方、細菌は染色体を細胞質に持つ原核生物である。
細胞質には様々な構造体があり、核とともに細胞内小器官といわれる。
それぞれの細胞内小器官の間は細胞質基質という液体の中にある。
核は球形で染色液によく染まる。通常1つである。この中に染色体があり、遺伝子が入っている。例外的に骨格筋の細胞は多核で、赤血球は無核である。
核は二重膜からなる核膜に包まれている。核膜には核膜孔と呼ばれるたくさんの穴がある。
核の内部には染色体とタンパク質と核小体がある。
染色体は、真核生物ではDNAとタンパク質からなる
核の働きは細胞の形や性質のことである「形質」を決めたり、これを次代に伝えたりすることである。
核を取り除いたアメーバーは細胞分裂、捕食、成長に関するDNAの遺伝情報がなくなってしまうので、やがて死ぬ。
核のまわりには細胞質基質という液体がある。
核以外の主な細胞内小器官には以下のものがある。
ミトコンドリアは枝豆のような形で二重膜構造をしている。
外側を外膜といい、内側の内膜は内腔に突出している。この突出した部分をクリステという。
ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを作り出す働きをしている。
だから筋肉や肝臓の細胞に多く見られる。
ゴルジ体は数枚の扁平な袋が積み重なった構造と周囲に散在する球状の小胞からなっている。
消化酵素やホルモンなどの細胞内で作られたタンパク質を細胞外に分泌する働きをしている。
だから内分泌腺や外分泌腺の細胞、神経細胞で多く見られる。
細胞膜は細胞内外を隔てるだけでなく、物質の出入りの調節も行っている。
水などの溶媒とスクロースなどの溶質をどちらも自由に透過させる膜の性質を全透性という。
一方、溶媒は自由に通すが溶質は透過させない性質を半透性という。この性質を持つ膜を半透膜(はんとうまく)という。
細胞膜は半透膜に近い性質を持ち、特定の溶質以外は通さない。
ちなみに植物が持つ細胞壁は全透性である。
全透膜で隔てて、一方に砂糖水、もう一方に水を入れる。すると水分子もスクロール分子も両側に移動して膜の左右の濃度は同じになる。このように濃度が均一になる現象を拡散という。
半透膜で隔てて、一方に砂糖水、もう一方に水を入れる。すると水分子だけが反対側に移動してスクロール水側の液面が上がる。
濃度を均一にしようとするがスクロール分子が通れないので、水分子だけが移動したためである。
このように半透膜を通して水が移動することを浸透という。浸透しようとする圧力を浸透圧という。
これは半透膜を隔てて溶液が水を引き込む力と考えると理解しやすい。
溶液の浸透圧は当然、溶液の濃度に比例するので、溶液の濃度が濃いほど浸透圧が高く、水を引き込む力が強い。
赤血球を様々な浸透圧の溶液に浸す実験をする。
高張液、すなわち細胞内液より高い液に浸すと、赤血球の細胞内液から外に水が出て赤血球は収縮する。
等張液、すなわち細胞内液と同じ浸透圧の液に浸すと、水の移動はなく、赤血球は変化しない。なお、赤血球と同じ浸透圧の食塩水を生理食塩水という。
低張液、すなわち細胞内液より低い液に浸すと、赤血球の細胞外液から内に水が入り細胞は膨張する。水の中に入れると細胞内に水が入り続け、赤血球は破裂してしまう。これを溶血(ようけつ)という。ヒトに水を点滴すると溶血がおこり、量が多ければ死亡する。
なお、赤血球には核がないので、厳密な意味では赤血球は細胞ではない。
細胞膜は基本的に半透性なので水の浸透がおこり、特定の物質を透過させる選択的透過性がある。
細胞膜では他にも様々な物質の排出、取り込みを受動、能動輸送で行なっている。なお、受動輸送とはエネルギーを使わずに自然におこる移動のことで、能動輸送とはエネルギーを使って行う輸送のことである。
多細胞生物において同じ形態、機能を持つ細胞の集まりを組織という。
複数の組織が集まって、まとまった機能を持つ器官を形成する。
複数の器官が互いに機能を分担して、効率よく働いている集まりを器官系という。たとえば消化器系などである。
動物体では、細胞が集まって組織になり、これが集まって器官になり、これが集まって器官系ができ、それが集まって個体になっている。
動物の組織は上皮組織、支持組織、神経組織、筋組織の4つに分けられる。
上皮組織とは体の外表面や消化管、血管の内表面をおおっている組織である。
細胞どうしが隙間なく密着している。
支持組織には結合組織、骨組織、軟骨組織などがある。
結合組織は組織と組織の間を埋めて、結合させたり支えたりしている。細胞どうしは密着せず、その間は細胞間物質で満たされているという特徴をもつ。
皮膚の真皮は皮膚の表皮の下にあり、繊維状の物質を分泌している。
骨では骨細胞が細胞間物質になる物質を分泌している。
軟骨では軟骨細胞が細胞間物質になる物質を分泌している。関節の軟骨は硬骨と硬骨の間にあってクッションの役割をしている。
血液も結合組織で、赤血球、白血球、血小板の間には液体の血しょうがある。
神経組織は刺激を受け取って興奮を伝える働きを持つ神経細胞、別名ニューロンからなる。
筋組織は筋細胞からなる筋繊維が集まってできている。
筋組織は横じまの横紋がある横紋筋とこれのない平滑筋に分けられる。
横紋筋はさらに体を動かす骨格筋と心臓を拍動させる心筋に分けられる。
骨格筋は意志によって動かせる随意筋(ずいいきん)であり、収縮は速く、疲労しやすい。筋細胞の核は多核である。
心筋は意志によって動かせない不随意筋であり、収縮は速く、疲労しない。筋細胞の核は一つである。
平滑筋は胃や腸を動かす筋肉で、不随意筋であり、収縮は緩やかで疲労しにくい。筋細胞の核は一つである。
ヒトの体細胞の核の中には23対、46本の染色体がある。
男女で染色体を比較すると22対の染色体は男女に共通の染色体で常染色体と呼ばれるが、残りの1対の染色体は組み合わせが異なり、性染色体と呼ばれる。
ヒトの性染色体は女性では2本とも同じ形、同じ大きさだが、男性では形、大きさが異なる。
男女で共通の性染色体をX染色体、男性にしかみられない性染色体をY染色体という。
ヒト性染色体の組合せは、女性はXXであり、男性はXYである。
性染色体には性の決定にはたらく遺伝子だけでなく、性以外の形質に関係する遺伝子も含まれる。
このような遺伝子による形質は雄と雌で現れ方が違ってくる。この遺伝を伴性遺伝(ばんせいいでん)という。
ヒトの赤緑色覚異常や血友病の遺伝子はX染色体にある劣性遺伝子で、伴性遺伝することが知られている。
伴性遺伝を考えるときはX染色体の右上に遺伝子を書いて考える。
血友病でない遺伝子をA、血友病の遺伝子をaとすると、この遺伝子はX染色体上にあるので、血友病の女性はXaXa、血友病でない女性はXAXaまたはXAXAであらわされる。
血友病の男性はXaY、血友病でない男性はXAYであらわされる。
表を作ると、血友病の女性XaXaと血友病でない男性XAYから生まれてくる男児は必ず血友病になり、
女児は血友病にならないことがわかる。